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ゲイリー・オールドマンの「裏切りのサーカス」

ゲイリー・オールドマンという俳優の存在が気になるようになったのは、「蜘蛛女(原題:Romeo is bleeding)」という1993年の映画をCSで見てからだ。
ゲイリーが演じるのは、マフィアから平気で賄賂をもらっている警察官。美しい妻と暮らしながら若い愛人を囲っている。その上、護送を命じられた女殺し屋の誘惑にあっさりはまってしまい、散々な目にあわされて堕ちていく。
もうとことんダメダメで情けない主人公なのだが、彼が演じると何とも言えぬ味があり、そのダメっぷりの素敵さに感動を覚えるほどだった。

こう書いても、この映画を観た人はほとんどいないと思うので、もう少し分かりやすいところで言うと、リュック・ベッソンの「レオン」でジャン・レノとナタリー・ポートマンを執拗に追い詰める悪徳警官役。「蜘蛛女」はダメダメな奴だったけど、こっちはかなり「悪」な感じで迫力あったっけ。

そんなこんなでずっと気になる存在だったゲイリーが主役を演じ、アカデミー賞主演男優賞にもノミネートされたらしい、ということで、新作「裏切りのサーカス(原題:Tinker Tailor Soldier Spy)」を見に行った。

1970年代、東西冷戦下のイギリスの諜報部を舞台にしたスパイ映画。といってもミッション・インポッシブルみたいな派手派手ではない。ジョン・ル・カレの小説が原作の、ストイックで渋い映画で素敵だった。

なんだか「一度見ただけでは分からない」を宣伝文句にしているらしいけど、確かに二重スパイの話だから人間関係が複雑でよくわからないところも多い。それでも、いかにも70年代のロンドンらしいどんよりとした雰囲気(といっても実際に見たわけではないが)、俳優たちの抑えた演技の中ににじむ緊張感、とにかく雰囲気がすごく良くて、分からなくてもずっとその中に浸っていたい感じ。

石畳の街、古くておしゃれな車(シトロエンらしい)、諜報部の倉庫みたいなオフィス、あまり光の入らないホテルの部屋、男たちか着ているスリーピースのスーツ。どれもこれもカッコイイ。(ポール・スミスがデザインのアドバイザーだとか)
そして、男と女のロマンスよりも、男同士の友情を越えた関係を匂わせて、意味深なムード。

確かに何度見ても飽きない要素がいろいろ含まれていそう。もう一度見たらまた新しい発見があるかも。

余談だけれど、ゲイリー・オールドマンは写真をとるらしい。少し前まで、丸の内のPaul Smithで彼の撮った写真を展示していたとか。もう少し早く知っていればな~
by cactusflower | 2012-05-19 23:36 | 映画